人はなぜ新しいものを買うのでしょうか?
いきなり少し哲学チックな質問から入りました。
あなたが新しいものを買うとき、新しくなかったとしても何かを買うときには理由があります。
それは買った商品のメリットを手にするためです。
しかし、お客さんが買わないという選択をしたときにも、それによって得られるメリットがあり、お客さんはそれを求めての決断である可能性が高いのです。
今回はそんなお話です。
Contents
商品やサービスを買うことによってメリットを得る
暑い夏にそれを和らげるメリットを得るために、うちわが発明されました。
うちわでは手を動かすのが大変なので、楽になるメリットを得るために電気を使った扇風機が発明されました。
さらに快適さを求め、クーラーが発明されました。
そして冬でも使える温暖の両方を兼ね備えたエアコンとなりました。
移動手段も徒歩を原点として、馬などの背中に乗る。
馬車、人力車、自転車、蒸気機関車、自動車、電車、新幹線、電気自動車、リニアモーターカーとさまざまなメリットを享受できます。
お客さんが商品やサービスを買うのはその代わりにメリットを手に入れるためです。
同じく売り手側が商品やサービスを開発し売る目的は、お客さんにメリットを得てもらうためだと言えます。
良いメリットが得られるのに買わないお客さん
経営者であれば、自分の会社の商品のメリットは重々理解しているはずです。
飲食店であれば、おいしいや健康的であるなど。
美容室であれば、おしゃれや最先端や若々しく見えるなど。
ホームページ制作業であれば、おしゃれなホームページなど。
LEDの販売業であれば、明るさや電気料金の削減など。
・・・・・・・
全ての業種で、最大限のメリットをお客さんに提供しようとがんばっています。
しかし、使えば最大限のメリットが得られるにも関わらず、お客さんはなかなか買わないことがあるのです。
お客さんは、うちわが扇風機になったら喜んでくれるはずです。
お客さんは暗い夜がもっと明るくなり、さらに電気代も削減できれば喜ぶはずです。
しかし、お客さんは買わない・・・。
こんなことが起こります。
お客さんが買わない理由と買ってもらいたい営業マン
その商品やサービスを買うことによって、得られるメリットは確かにあっても、
- 料金が高すぎる
- 購入後に手間や時間が必要
- 使いこなすのにコツが必要
- ライバルの類似商品とどちらが良いか判断できない
などの理由で購入されない場合が多くあります。
そこで営業マンは値下げをしたりと頑張ります。
そこでお客さんの購買意欲に火が付けば、購入されることもあるでしょう。
しかしお客さんが購入しない理由はそこにない場合も多いのです。
お客さんが買わないことで得るメリットがある
私は以前、3泊4日の泊まり込みビジネス研修を販売していました。
内容的には絶対的な自信があり、非常に効果的であることは間違いありません。
お客さんは紹介がメインで、営業では基本的に紹介されてお客さんのところに行くのです。
相手は基本的に経営者で、その時点で紹介者から「絶対にいい!!」「あなたにピッタリである!」という猛烈なプッシュをされています。
まさに営業的には最高の状況です。
話を聞いてもらうとお客さんからも「良いのは分かった」「自分に必要なのも分かった」「○○さん(紹介者)の気持ちも分かった」
でも・・・・・
と言う言葉が出てきます。
その理由は
お金がかかる・・・・
時間が必要・・・・
となります。
そこで、お金に関する問題や時間に関する問題を解決できるように提案をします(今回はどのように解決するかは置いておきます)が、結局購入しないお客さんは多いのです。
実はこのお客さんは、買うことによって得られるメリットよりも、買わないことによって得られる(守られる)メリットを取っているのです。
一般的にお客さんが新たなものを買わないことによって得られるメリットとしてはこのようなことが考えられます。
今回は先述の私の前職である高額泊まり込み研修を例としていますが、他の商品やサービスでも比較的同じと考えられます。
- お金が減らない
- 時間が減らない
- 変化する怖さに立ち向かわなくて良い
- チャレンジしてダメだった場合の本当の自分の実力が見たくない
- 実は今の状態が楽
- めんどくさい
- ダメな理由を外部の責任にしていたい
などがあるのです。
根本には基本的に人は変化を恐れ、現状を肯定したい欲求があるのです。
お客さんが買わないことで得られるメリットを無視してはいけない
そこで構わず、自社商品のメリットを前面に猛プッシュしたらどうでしょうか?
お客さんは、さらに断る理由を探して言うだけです。
お客さんが買わない理由など出そうと思えばいくらでもあるのです。
そこで出てくる言葉の代表的なものが「お金が~」「時間が~」なのです。
その時点で、お客さんの口から出てきた買わない理由を覆しても効果は薄いのです。
お客さんが感じている『買わないことで得られるメリット』に目を向けることなく、売り手の都合である『買うことで得られるメリット』ばかりを押し付けても、お客さんは「YES」とは言わないでしょう。
先に言えばお知らせ、後に言えば言い訳
お客さんの口から何かしらの買わない理由が出た後に、売り手側はそれを覆すための理屈を伝えようとします。
しかし、これは売り手側の言い訳に聞こえてしまいます。
すると、お客さんは他の買わない理由を出してきます。
この流れでのお客さんの心理は「買わない前提」なので、売り手側が頑張っても購入に至るのは困難です。
それを防ぐために、お客さんの中に現れる買わないメリットを、お客さんの口から出るより先に潰しておくことが必要です。
例えば、さりげない会話の中に
「周りが変化している時代に変化を恐れていたら、完全に周回遅れになってしまいますよね」
などと釘をさしておくことによって、いざ決断の際に
「変化が怖い→しかし変化しないと大変なことになる」
という思考が強くなります。
さらに、デメリットをこちらで受けておくという方法もあります。
例えば、お客さんの中にある「めんどくさい」という気持ちの前に、「めんどくさいことは全てこちらが引き受ける」と伝えておく方法です。
ほかにもさまざまな形が考えられます。
お客さんに同じ意味合いのことを伝えるにしても、会話の中で自然に伝えれば情報やお知らせとして認識してもらえます。
しかし、お客さんの口からでら『買わない理由』を覆すように使うとそれは「言い訳」と感じ、マイナスに働いてしまうのです。
まとめ
自分の商品やサービスに自信を持っている経営者は、同じくお客さんがそれらを買うことによって得られるメリットにも自信を持っています。
しかし、お客さんにとって『買う』ということは変化なのです。
人は基本的に変化を恐れます。
この感情こそが『お客さんが買わないことによって得られる(守られる)メリット』なのです。
購入した際のメリットばかりを声高に訴えてはいけません。
購入しないことによるメリットをしっかりと理解した上での販売方法を計画する必要があります。