「マーケティングなんて、うちにはまだ早いです」
と、言われる企業の経営者の方が多くいます。
・・・もしかして、あなたもそう思っていませんか?
むしろ小さな企業、有名でない企業、個人こそマーケティングが必須です。
なぜか?
今回はその点についてお話していきたいと思います。
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基本的なビジネスの流れ
ビジネスの基本的な流れはこれだけです。
【売り物を決める】→【人に】→【セールスをして】→【売る】
この4つの部分を細分化していくとさまざまな方法がありますが、基本的にはこの流れです。
これは個人商店でも車でも、超精密機器でもサービス業でもすべて大枠は同じです。
マーケティング戦略のない企業の形
毎年新年度になると異業種交流会などには右も左もわからない新卒社員さんがこぞって参加しています。
理由は、
「まだ知識も方法論もないけど、とにかく売ってこいと言われたから」
マーケティング戦略のない例でよくあるのは、売り物だけを企業で決定し、営業マンにそれぞれのやり方で
「とにかく売ってこい!」
という形です。
- 社員Aさんはテレアポを無差別にかけまくる。
- 社員Bさんは飛び込み営業
- 社員Cさんは親族のつながりにセールスしてなんとか買ってもらう。
- 社員Dさんは人づきあいがうまいので紹介をもらい、セールス先を獲得する。
と、個々に自分たちで考え行動しなくていけません。
すると営業成績に差が出てきます。
成績の良いCさんは褒められ出世をし、成績の良くないAさんは怒られてダメ社員となってしまいます。
このように結果として振るいにかけられてCさんは残り、Aさんは脱落します。
すると企業はさらに採用をして、また振るいにかけ残る人と脱落する人が出るという状況を永遠と続けます。
これは売れるか売れないかの責任を個々の営業マンが負い、最後の最後まで売り上げ見込みの分からない行き当たりばったり経営です。
いまだにこの状況を永遠に続けている企業は多くあるのも事実です。
社員さんから見ると、こういう企業をブラック企業と呼ぶのでしょうか?
企業にマーケティング戦略がなくても売れる時代はあった
ある意味羨ましい話かもしれませんが、過去にはそういう営業スタイルでも売れる時代はあったそうです。
(今の時代でも、その方法で売れている方もごくごく少数はいらっしゃるようです)
その大きな要因は2つです。
1.人口が増え続けていた(今は減っている)
日本の人口数はずっと増え続けていました。
2008年に1億2,808万人でピークに達し、その後緩やかに減少しています。
注目すべきは、私たちのサービスや商品を購入するであろう、15~64歳の生産年齢人口です。
1995年の8,726万人をピークとして減少に転じており、グラフの急下降線は総人口の下降具合を上回っています。
2.今より圧倒的にお客さんが手にする情報量が少なかった
お客さん側の感覚として、以前と全く異なっているのはこちらです。
当時は何かしらの形で、商品情報を手にしたお客さんは比較材料を見つけるのは容易ではなかったので、「良さそう」と判断した商品の購入を妨げるハードルも低かったのです。
しかし今では、お客さんが「良さそう」と思う前に、お客さんには知識がありますのでそこで比較されます。
そして「良さそう」と思ってもらったとしても、そこから類似品との比較、価格の比較、デザインの比較、口コミの比較などが本当に瞬時にできてしまうのです。
恐ろしいことにインターネットが爆発的に普及した現代の情報量は、10年前の実に530倍と言われています。
高度経済成長期で訪問販売などが多くあった昭和40年代(くらいでしょうか?)からは何倍の情報量なのでしょうか・・・・?
その時代と比べたら、お客さんの商品購入に至るハードルの高さはとんでもなく上がっているのです。
現代のみなさんとお客さんの間には、超高層ハードルが立っているのです。
そのハードルを越えなければ、お客さんは購入してくれません。
日本人の勘違い
では、そのハードルを越えて売れるのはどんな商品(企業)でしょうか?
・・・・・・・・
「本当に良い商品を作っていれば売れる」
「とにかく良い商品を作るしかない」
ここに日本人の勘違いがあります。
非常に健気で真面目で美しく見えますが、残念ながらその限りではありません。
(そのような考えで運営されている企業があるのも事実ですが、非常に少数であることと、そのような企業は実はそのようなマーケティング戦略をしっかり行っていることが多いです)
他企業を圧倒する超画期的な商品を大々的に扱っているなら別ですが、そのようなことは少ないと思います。
商売下手なマーケティング戦略のない日本企業
以前、インドネシアの高速鉄道事業に日本の新幹線ではなく、中国の技術の採用が決定しました。
採用決定後にさすが中国、問題が発生しましたが、採用(購入)の決断は中国は日本に勝ったのです。
海外事業ではそのような例はたくさんあります。
「中国製は安いから・・・・・」
たしかにそれも大きな理由でしょう。
しかし日本の製品は良いのに売れなかったのは事実です。
日本の技術はすごいけど、商売は下手。
とよく言われるのがこれです。
でも売らなくてはいけない
その結果、多くの会社で行うのが肩書や役職をフル活用したトップ営業です。
以前、日本でも総理大臣が海外に原発を売り込みに行きました。
・・・・・あなたの会社も、「結局社長が営業しなきゃダメ」なんてことありませんか?
しかしあなたも「このままではいけない」と気づいているはずです。
企業全体でハードルを越えるマーケティング戦略
私は土光敏夫氏の愛弟子である師匠から
「人はがんばれと言われても、どうがんばればよいのかを明確に教えないとがんばることはできない」
と教わりました。
個々の営業マンのスキルに任せて売上を上げるのを行き当たりばったり経営と言いましたが、そのような形では長期的な成長は難しいのは明らかです。
【売り物を決める】→【人に】→【セールスをして】→【売る】
を戦略と戦術を明確に持って、どのように人を集め、どのような商品を、どうやって買ってもらうのかを明確にします。
ざっくり言うとこれが企業におけるマーケティング戦略です。
それが明確になった上で、ようやく「何を行うか?」が明確になります。
この「何を行うか?」が行動レベルまで落とさされて、ようやく「どうがんばるか」が明確になるのです。
計画的なマーケティング戦略とは
個々の営業マンに責任を負わせている会社は、当月の売り上げは営業マンの報告がなければわかりません。
そこで少なければ「なんとかしろ!!」と言えば営業マンは必至で頑張るでしょう。
しかし実際に、何とかなるはわかりません・・・・。
企業でマーケティング戦略の形がしっかりと固まっていれば統計から
○○円の売り上げを上げるには約10人のお客さんに購入してもらう必要がある
↓
購入率は10%だから、100人のお客さんに声掛けをする必要がある
↓
100人のお客さんに声掛けをする方法は、○○と△△と□□。
↓
ではA君は○○をこれくらい。B君は△△をこれくらい。C君は□□をこれくらいやってくれ。
非常に大雑把に表現しましたが、このように計画的な売上を立てられると同時に、「何をがんばるか」が明確に提示できるのです。
買ってもらうためのマーケティング戦略
企業でマーケティング戦略が必要な理由は、買ってもらうためです。
企業側から見て、売るためではありません。
お客さん目線で、買ってもらうためなのです。
あなたの商品やサービスが、本当にお客さんが喜んでくれるものであるならば、絶対に買ってもらい喜んでもらわなくてはダメなのです。
お客さんはあなたを知らない
あなたの素晴らしいサービス・商品を欲しがっているお客さんはいるのです。
しかしあなたはそのお客さんを知りませんし、その人もあなたの会社や商品を知りません。
情報量が莫大に増えて、ただ良い物であれば売れる時代ではなくなったのであれば、良い物を戦略と戦術を使ってお客さんの元に届けなくてはいけません。
小さな企業には小さな企業のマーケティング戦略があります。
これは逆に大企業ではできない手法でもあるのです。
それこそが他のどの企業でなくあなたを選ぶ理由となり得るのです。
マーケティングは才能ではなく、知識です。
勉強すれば身につくものです。
行き当たりばったり経営からの脱却に、まずマーケティング戦略の勉強から始める必要があります。
まとめ
「良いものを作っていれば売れる」
それはあなたの願望でしかありません。
そんな時代はとっくに終わったのです。
だからといって社員に負荷をかけ、根性努力の営業スタイルの経営も長くは続かないでしょう。
マーケティング戦略と言うと大企業のものだという印象があるかもしれませんが、そうではありません。
むしろ大企業のような競争力がないからこそ、効果的なマーケティング戦略をフル活用する経営スタイルを取るべきだと言えます。